免震建物は高次モード応答を励起しにくいとの認識があるが、近年の免震デバイスの多様化と上部構造の柔構造化で、この認識は改めなければならない状況にある。国内外の学術研究を総合的に統合し、地震動特性をも考慮した免震建物の地震応答構造の分析とこれに対応した設計用地震荷重分布(せん断力係数分布)の提案を行った。 平成24年度は平成23年度までに考案した免震建物の設計用地震荷重算定式の適用範囲の拡張を目的とした検討を実施した。多種多様な免震デバイスに対する適用性や実建物を想定したモデルを設定し提案式の適用性の検証および現行の設計法との比較を行った。具体的な研究成果は次のとおりである。 1、これまでの算定式はバイリニア型復元力特性を対象に定めたものであるが、免震建物では数種類の履歴系ダンパーや流体系ダンパーを併用することが多い。これに対応するために、地震荷重評価の第1の指標としている免震係数を流体系ダンパーとの併用にまで概念を拡張し、汎用性の高い地震荷重算定式を提案した。 2、設計式としての簡便性を兼ね備えておく必要があるため、算定式の簡略化を行った。また、簡略化前後の評価傾向の変化を分析し、変化はそれほど大きくないことを確認した。 3、免震デバイスの組み合わせを変化させた免震建物モデルを試設計し、地震荷重算定式の適用性を確認した。
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