研究概要 |
橋梁下面や密集地域のビル外壁など日射が当たらないコンクリート構造物外壁の非破壊検査を行うため,アクティブ赤外線サーモグラフィ法の確立を目指した.平成22年度は,1.コンクリートの分光放射特性の評価,2.数値シミュレーションによる検査条件の決定,3.最適な投光器の調査と選定を行った. 1.コンクリートの分光放射特性の評価ビルの外壁に用いられているコンクリートサンプルを入手し,FTIR装置を用いて,分光放射率を測定した.サンプルは500℃まで加熱し,波長域1.5~15μmの範囲のデータを測定した.70℃での測定も行い,分光放射率に対する温度の影響が少ないことを確認している.コンクリートは,近赤外域では0.6程度,遠赤外域では0.9程度の放射率を有し,遠赤外線を多く吸収することが分かった. 2.数値シミュレーションによる検査条件の決定既存の有限要素法プログラムANSYSを用いて,コンクリート構造物に赤外線サーモグラフィ法を適用する際に必要な熱量の調査を行った.赤外線サーモグラフィ装置の検出感度と試験環境を考慮し1℃以上の温度差が必要と仮定すると,深さ15mmの位置にある半径20mmの空洞に対しては7.5kW/m^2の放射能力のあるヒータで30秒間の加熱が必要であることが分かった.またPulse Phase Thermography法のプログラムを作成し,温度差ではなく位相差に着目することで,加熱温度ムラの検知への影響がなくなることを示した. 3.最適な投光器の調査と選定エクセル表計算を利用した数値計算により,コンクリートを効果的に加熱するためには,遠赤外型ヒータ>黒体型ヒータ>近赤外型ヒータの順に適していることを示した.ハロゲンランプの一部に黒体塗料を塗布し黒体型ヒータとすることで,黒体型ヒータが近赤外型ヒータより効果的にコンクリートを温めることを実験で確認した.
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