研究概要 |
屋外における日射作用温度を,長波長放射の影響である「環境作用温度」と着衣・皮膚表面で吸収される日射量の温度換算値の和として定義し,熱中症による事故が多く発生している路上や農場,運動場など地面特性や天空率の異なる様々な場所で環境作用温度の特性把握を試みた。平成22年度は,7~9月にかけて北海道大学構内で有色グローブ温度計による環境グローブ温度の実測を行った。測定項目は,黒色,白色グローブ温度,気温,相対湿度,風速,全天日射量,反射日射量である。測定場所は計11箇所であり,主な場所のアルベドと人体から見た天空面の形態係数は以下のとおりである:駐車場(アルベド0.11,形態係数0.27);土グラウンド(0.12,0.5);芝生(0.2,0.33);中庭(0.12,0.16);工学部屋上(0.19,0.5)など。熱中症の想定場所として路上,密集市街地の路上,運動上,農場/ゴルフ場,開放空間の5つに集約し,データの分析を行った。分析には,雨天日を除き気温が25℃以上のデータを使用した。分析の結果,気温と環境グローブ温には比例関係があり,芝生を除くと気温よりも環境グローブ温の方が高いことが示された。屋外の長波長放射熱の影響としてΔt_<rl>(=環境グローブ温-気温)を定義した。Δt_<rl>を想定場所別にみると,路上(密集市街地)0.88,運動場0.68,路上0.58,開放空間0.49,農場/ゴルフ場-0.22の順に低い値を示した。芝生(農場/ゴルフ場)では水分蒸発の影響によりΔt_<rl>の値が低くなったと考えられる。次に日射の影響を考慮した日射作用温度を用いて想定場所の比較検討を行った。アルベドのほぼ等しい運動場と路上(密集市街地)では,運動場の形態係数が大きいため,日射作用温度は運動場の方が高くなった。形態係数の等しい路上と農場/ゴルフ場を比較すると,農場/ゴルフ場の反射日射量が多いものの,Δt_<rl>は1℃程度小さいため全体としては路上の熱ストレスが大きいという結果を得た。
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