研究概要 |
「IEQ→覚醒状態→作業効率」という一連の因果関係を系統的に明らかにするため,22年度では,「IEQ→覚醒状態」と「覚醒状態→作業効率」の二段階に分けて実験を行った。先ず,「IEQ→覚醒状態」の因果関係を検証するため,室温・換気量・照度が調節可能な実験室において,計6ケースの環境条件を設定し,被験者の覚醒状態を調査する実験を実施した。実験時間は約2時間とし,実験中,被験者には主として学習用の映像を視聴させた。被験者の覚醒状態については,アンケートによる主観的評価と,皮膚コンダクタンス(SC)計測による客観的評価を実施した。アンケートでは,覚醒状態を「エネルギー覚醒(EA)」と「緊張覚醒(TA)」の二軸で評価する手法を採用した。この実験の結果,高室温・低換気量・低照度が重なったケースにおいて,他のケースに比べて実験前後のEAの低下が大きい傾向がみられた。また,SCとEAとの間に有意な関係が認められたことから,SCが覚醒状態を調査する方法として有効であることが確認された。次に,「覚醒状態→作業効率」の因果関係を検証するため,被験者に校正作業・数字入力作業・数独を行わせ,その成績と覚醒状態との関係を調査する実験を実施した。被験者の覚醒状態は,各作業の前後で前述の実験と同様のアンケートにより評価した。覚醒状態の異なるデータを幅広く収集するため,実験環境やサーカディアンリズムの統制はしなかった。この実験の結果,EAが高いほど作業成績が向上する傾向が確認された。
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