平成22~23年度は,「IEQ→覚醒状態」の因果関係を検証する被験者実験と,「覚醒状態→作業効率」の因果関係を検証する被験者実験に分けて実施し,その結果,IEQの操作によって覚醒状態に差異が出現することと,覚醒状態によって作業効率が変化することがそれぞれ確認された。そこで平成24年度は,「IEQ→覚醒状態→作業効率」という一連の因果関係を検証するための被験者実験を実施した。なお,IEQのパラメータは室温(22℃・25℃・28℃)とした。 その結果,複雑な作業を行う場合については,28℃条件では22℃条件よりも「エネルギー覚醒(EA)」が有意に低くなるとともに「緊張覚醒(TA)」が有意に高くなる様子がみられた。また,作業効率に関しても,作業開始から一定時間経過後において,28℃条件で22℃条件より低下する様子(p<0.1)がみられた。これらの結果は,平成22~23年度に得られた知見と概ね一致していた。一方で,単純な作業を行う場合については,EAとTAが室温条件に依らず一様に低くなり,室温条件間の明確な差異はみられなかった。また,作業効率にも室温条件による差異はみられなかった。これは,室温の違いによる影響よりも,単純な作業を行うことによる覚醒度の鎮静化の影響が強かったことが原因と推察された。以上より,作業内容によるIEQと作業効率との間の関係性の違いが,覚醒状態を媒介とすることで合理的に説明できることが示された。
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