一般的な赤外熱画像装置は計測する波長範囲がおよそ7μm~14μm程度であり、火炎温度付近での放射波長のピーク(600~1000℃で2.7~3.2μm程度)とずれがある。そこでまず赤外熱画像装置により火炎の温度計測出力値が実際の波長ごとの放射強度を積分した値から換算した温度とどのような関係があるのを調査し、その妥当性を調査した。 火炎からの波長ごとの放射強度の計測には、赤外分光分析装置(SR5000 IRS社製)を用い、1.3~14.5μmの範囲の放射スペクトルを計測した。計測は0.5m角の拡散プロパンガスバーナーに形成された拡散火炎(出力100kW)を対象とした。また、同一条件で赤外熱画像装置での計測も実施したのに加え、計測対象の火炎の背後に高温の黒体炉を設置した状態での赤外分光計測を実施し、波長ごとの火炎の赤外線透過率について検証した。 火炎のみからの放射についての赤外分光分析より得られた放射スペクトルを検証した結果、火炎の温度が現状で想定している値よりも高温であることが示唆された。また放射率については波長によって大きな差があることが明になり、特に赤外熱画像装置での計測波長範囲である7μm~14μmにおいては比較的低い値となっている。実際に分光分析より得られた火炎温度よりも赤外熱画像装置の値が低く出力されており、熱画像装置により火炎の温度分布等を検証する場合には、計測器の計測波長範囲での火炎放射率を適宜検証して補正する必要があることが明確になった。火炎の放射率については、煤の発生がその値に大きく影響することは自明であり、これはすなわち燃料と燃焼条件等によって値が変動することを意味するので、火炎の温度等計測においても条件ごとに放射率の検証が必要であるといえる。
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