H22年度は、都市再生の成功事例としてバルセロナ、ベルリンを中心に、これまでの都市再生政策ならびに再生の現状の把握、分析に努めた。研究を遂行していく上で、都市再生に伴う地区の変容を深く理解するのにより相応しい都市を追加的に検討する必要が生じたため、繰り越しの上、研究を継続的に実施した。具体的には、自動車産業(FIAT)によるワン・カンパニー・タウンであったイタリア北部の都市トリノを取り上げ、産業の斜陽から2004年冬季オリンピックを経験する中で、都市再生政策とジェントリフィケーションや移民街化等の社会的排除の問題がどのように発生、展開してきたかについて調査した。旧市街に位置し、欧州最大規模の青空市場であるPorta Palazzo周辺地区と、市の中心駅以南のサン・サルバリオ地区は、いずれも労働者地区としての性格が色濃かったが近年移民の集住エリアに変質する一方、若い商店主が個性的な店舗を展開する多文化共生の現場ともなっている。Porta Palazzoについては、市の再生プロジェクトThe Gateの運営委員会に、San Salvarioについては、移民のための教育プログラムや社会的弱者のための統合プログラムの拠点となっているCasa del Quartiere San Salvarioにそれぞれ聞き取り調査を行った。市の都市計画担当部局や整備公社とともに、移民を中心とする多文化共生の取り組みの現場にも調査を行うことで、より詳細な空間的再生ならびに地区変容の把握が可能となった、
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