本研究では、欧州都市の中でも都市再生の先進的事例として知られているバルセロナ(スペイン)、ビルバオ(スペイン)、トリノ(イタリア)、マルセイユ(フランス)、ベルリン(ドイツ)等を対象に、(1)都市再生政策の実態を把握し、(2)都市再生の結果生じたジェントリフィケーションによる地区変容の現状と移民コミュニティの諸課題を特定するとともに、(3)そうした負の側面に対する地域からの自律的な取り組みならびに都市政策上の対応を検討した。空間的アプローチの観点からは従来にも増して公共空間の意味が重要性を増しており、わけても空間設計だけではなくそこでの多様な活動プログラムの展開が政策の鍵を握っている。こうした空間整備に加えて、一定の社会住宅の整備や住民のエンパワーメントを支援する社会プログラムを同時並行的に実施することで、多文化を混淆させる新たな価値創造を目指している現状が明らかになった。
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