本研究は都市の火災安全性能を正しく把握し,また現在数多くなされている様々な防火対策の妥当性と限界を論じるため,出火構造の適切な記述を試み,出火対策を含めた総合的な防災対策の評価を行うものである.最終年度は特に都市域を対象として,出火のより詳細な実態と出火対策の効果把握を最終的な目標として行った.結論として,消防本部へのアンケート調査などにより,詳細な出火データの入手ができ,以下のことなどが分かった.今後は,この詳細なデータを用いた各種分析が検討課題となる. 1.津波火災の火災1件当たりの延焼棟数は約20棟と,地震火災の約13倍であった. 2.建物火災60件の中で火元の建築物の構造が判明している36件の内訳を調べた結果,その他1件,不明1件を除くと非木造が23件,木造が11件であった.これより,木造建築物に比べて非木造建築物の方が津波火災の火元となりやすいことがわかる.なお,火元となった木造建築物はほとんどが住宅用途であったが,他方で火元となった非木造建築物は共同住宅や工場,イベントホールがなどが主な用途であった. 3.同様に,建物火災60件の中から火元の建築物の高さが判明している34件の内訳を調べた.この結果,1階の建築物からの出火が15件,2階の建築物からの出火が14件となっているが,中には9階,10階のような高層建築物からも出火していることが判明した. 4.津波火災全149件を火災種別に整理した結果,建物火災は60件,車両火災は32件,船舶が1件,その他(田畑など.不明含む)が54件となっており,建物火災の約半分の車両火災が発生している 5.津波火災の発生日時は,3月11日中に発生したものは82件であり,半分程度が当日以降に出火したものであることが明らかになった.
|