本年度は、東日本大震災という未曾有の災害を受けて、宮城県石巻市など、昨年度新たに加えた対象都市と地域再生の課題を再整理し、研究主題のフレームの見直しを最初に実施した。 これを受けて、新しく設定した対象都市における基礎調査を追加実施し、昨年度に収集したデータを改訂し、市街地での建物や居住環境の状況、市民による多様なプロジェクトの実施状況についての分析を行い、その結果を用いた意見交換とワークショップを、宮城県石巻市、広島県尾道市の2地域で開催した。また、2つの地域と人口規模や成立過程の点で類似する人口10万人規模の地方都市を対象に、市街地の変容や現在の取り組みなどを調査し、主対象となる地域の位置づけの考察を行った。 この意見交換で出された意見や提案をもとに、2つの地域における市民セクター主導による持続可能な地域再生手法につながるプロジェクトの創出とそのプロセスデザインについて考察を行った。この考察内容を踏まえて、密集市街地の地域再生に関して、市民、行政、民間各セクターの複数の主体を対象に、インタビュー調査を実施した。 年度終盤には、意見交換やワークショップの実施結果とこれまでの調査結果等を照合し、知見の抽出と研究成果の集約を実施した。その結果、密集市街地の地域再生に関して、その中心にある歴史的市街地の役割を再定義することにつながった。
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