本研究では、土地区分条件の簡略化を図る自然立地的土地利用計画と、植生以外の土地条件も有効に活用するIan Mchargのエコロジカル・プランニングの双方の良い点を統合することを目的としている。植生調査による潜在自然植生図の作成が必要となる自然立地的土地利用計画における、植生調査の行程を、より自然の立地条件等に十分配慮した土地利用がなされていたと考えられる終戦後の航空写真から植生・土地利用を読み取ることで、より簡略化しつつ、森林や農地以外の非生物的な環境(例えば住居地)等の土地利用の適合性が判断できる土地区分手法の確立を試みる。 1年目の目標設定は、1980年代において、亀山章(当時信大農学部)らにより、自然立地的土地利用区分の作成がなされた長野県松川町と、兵庫県東条町の2地区を対象とする。既往研究として植生調査や、現地調査に基づく潜在自然植生図の作成とその区分と土地利用との関係性が分析されている地区の米軍写真データの収集と、その写真データを用いた伝統的な植生・土地利用図の復元を予定していた。 その後、亀山教授に助言をいただき、比較分析や、現地調査の実現性の観点から、同じ長野県内における飯田市上村および茅野市玉川地区の2地区を調査事例地として再選定仕直した。その後、選定した2地区のデータ収集を行い、写真判読による終戦後の植生・土地利用形態を復元した。 その結果、飯田市上村の土地利用では、日射量の多い南面に住宅、畑地が多く、北側斜面や、谷地に樹林地が多いなど微地形や環境に合わせた土地の使い分けがなされていた可能性が確認できた。 2年目は、この土地利用形態と、潜在自然植生との関係性を分析し、環境評価指標としての終戦後の土地利用形態の情報性を解析する予定である
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