研究概要 |
本年度は,当初の研究計画には入れていなかったが,別の関連研究で対象地域の高精度な空間データを入手することができたため,研究を補強するために,それを用いて対象地域内の自然監視性に関して塀や遮蔽物などの存在を暗黙的に考慮したモデルを新たに構築した.このデータは実際の空間の3次元形状を忠実に計測したものであり,3次元の離散空間モデルとして高速に処理することで,細い路地などの空間的特徴などを考慮できる.また,対象地域に特徴的な地形データが犯罪発生に密接に関連していることが判明したため,それをモデル化し,さらに侵入犯罪を考慮して,新たに国勢調査のデータを導入するなど,分析用のデータの拡充を行った. 分析手法の改良として,これまでのひったくり発生点の周囲を固定的に潜在的犯罪発生点に含める手法を改め,各クラスの判別精度が高くなるような半教師型の学習手法を提案し,その有効性を確認した. さらに,ひったくり点と空き巣の発生分布をクロスさせ,それぞれの犯罪発生に関する6種類の組み合わせのクラスラベルを定義し,構築したデータに関してRepTreeを用いた判別分析を行った.分析の結果,対象地域でそれぞれの犯罪発生を左右する大きな要因は海抜であり,それが低い場所では空き巣の発生密度が低いことがわかった.また推定歩行者数も大きな因子であり,全体的にその値が低いと空き巣の発生密度が低いことがわかった.事業所系の建物が若干存在する付近では,ひったくりの発生傾向が高いことがわかった.また,空き巣とひったくりが多いのは海抜が低く長屋建が比較的多く,壁面監視度の合計値が高いところでは,ひったくりが発生していない,といったことが明らかになった.
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