平成24年度は,ひったくりを対象として,それが発生する場所に多くみられる空間構成パタンが出来るだけみられないように,建物用途を再配置する方法を開発した. 対象地域はこれまでと同様に,京都市伏見区の北部とし,ひったくり犯罪の発生場所を考慮して,対象地域内の約60kmの長さの道路上を分析対象とした.空間属性として,視点から半径r(=40)m以内にある建物の壁面に,可視グラフに基づく正確な可視量の抽出アルゴリズムを適用して壁面からの監視性の度合いを定量化し,建物用途別の監視性の指標とした.さらに,街路上の歩行者を,既往研究と同様に,駅を起点とするランダムウォークにより推定して説明変数とした. 次に,建物用途の割り当ての最適化手法の開発を行った.ここでは,建築面積の違いがある範囲内に収まり,かついずれかの建物用途が異なる建物同士を交換する操作としてそれを実装した.最適化の前にオリジナルデータにおいて,各サンプリング点と犯罪発生点について空間属性の計算を行って学習用データを作成し,そのデータを使ってCAEPの学習を行った.次に最適化を行って建物用途の交換を行い,その交換されたデータで,空間属性を計算し直し,検証用データを作成した.そのデータを先に学習済みのCAEPに入力し,各点について各クラスの集約スコアを計算して分類を行った.各サンプリング点と犯罪発生点でのCAEPの集約スコアの和ができるだけ安全側になるような目的関数を定義し,反復局所探索法を用いて用途配置の最適化を行った. 最適化の結果,犯罪発生地区で見られた事業所等の非住宅系の建物の場所に個人家屋を中心とする住宅系建物が配置され,監視性に関するクラスP側の顕在パタンを低下させるとともに,クラスN側の顕在パタンを上昇させたことなどが明らかになった. また,これまで行ってきた研究を纏めて査読論文に投稿・発表することなども行った.
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