本研究は、個々の障害者の状況に即した個別的で可変的な環境調整の手法として「構造化」を位置づけ、「支援」と「環境」を結びつけて理解することによって、空間的な要素と支援環境の関わりを捉え、建築計画的な視点から構造化を導入した支援環境の空間的様相を明らかにし、自閉症者が理解可能で意味のある環境を構築する支援のあり方を模索することを目的とする。とりわけ将来の成人期を見据えた長期的視点の中で特別支援教育の個別教育プログラムの役割に着目したい。構造化を先駆的に導入している発達障害支援センターと協働して、早期療育施設と在宅、特別支援学校、福祉的就労施設や就労の場への継続的な教育環境づくりを行う特別支援学校に通所する自閉症児を研究対象として、空間的な要素と支援環境の関わりを建築計画的な視点から考察するものである。 <研究実績の概要>(22年度~23年3月31まで) 22年度は、下記について構造化を先駆的に導入している熊本の発達障害支援センターの早期療育施設と在宅、学校が協働して個別教育プログラムを提供する特別支援学校2校、特別支援学級2校における自閉症児の教育環境と在宅環境との包括的な支援に焦点をあてて本調査を行った。また23年度に本調査を行なう熊本県荒尾市の特別支援学校中等部・高等部の予備調査を行った。 【予備調査】(特別支援学校中等部・高等部、熊本県荒尾市) A:スタッフへのインタビュー調査.1.運営について(支援体制、業務内容、就労実習の工夫)2.構造化について(なぜそのような構造化を行う必要があるのか、具体的にどういう時にどのように用いているのか。本人の余暇はどのような理由でその内容になっているのか等)、B:プラン採取、家具の状況、C:構造化(物理的構造化・視覚的構造化・日課のスケジュール、作業システム)【本調査】(特別支援学校2校、特別支援学級2校、熊本県)スタッフの行動観察調査、利用者の行動観察調査:これらの行動観察調査おいては申請者による直接観察とともに、スタッフおよび利用者の行動をビデオカメラで記録して、調査後にパソコン上で編集して場面(シーン)ごとの支援のタイミングやコミュニケーションの様子をできる限り詳細に把握した。現在その調査結果を分析し論文にまとめる作業を行なっている。
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