研究概要 |
本研究は,今後も頻発が予測される豪雨災害を対象に,災害関係者(災害対応者+被災(見込)者)の関係構造に着目し,そのネットワークのあり様と特性を各人の「つながり」という観点から微視的に捉え,災害関係者で形成される災害情報授受の構造的な仕組みを明らかにすることで,早期復興と被害軽減を目指す減災に向けた諸活動の指針づくりや組織体制づくりのあり方について,基礎的な知見を得ることを試みるものである。 以上を踏まえ,研究期間内では以下の三つの具体的な目的を据えている。 (1)災害対応者の災害情報授受に関する関係構造の記述と特性の導出 (2)被災(見込)者のパーソナル・ネットワークに関する関係構造の記述と特性の導出 (3)災害対応者と被災(見込)者の相互ネットワークに関する構造特性の導出と提言 初年度は,主に(1)について平成21年山口・九州北部豪雨において多大な被害を受けた防府市を対象に実施した。 具体的には,まず市職員に対してアンケート調査を悉皆で行い(有効回答数548件(73.8%)),発災後2週間で主に連絡を取り合った者をあげ,各災害対応者をノード,情報伝達をリンクとし,災害対応における情報伝達を有向グラフで表した。リンク数の高いノード,中心性の高いノードの振舞いから,グラフの特徴を読み解き,樹状構造のみにおさまらない災害対応組織の情報伝達ネットワークの構造の大要を明らかにした。 さらに,要となったリンク数の多い市職員約30名に対してヒヤリングを実施し,情報伝達の構造的特性と情報伝達経路についてより詳細に明らかにした。
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