研究概要 |
本研究は,今後も頻発が予測される豪雨災害を対象に,災害関係者(災害対応者+被災(見込)者)の関係構造に着目し,そのネットワークのあり様と特性を各人の「つながり」という観点から微視的に捉え,災害関係者で形成される災害情報授受の構造的な仕組みを明らかにすることで,早期復興と被害軽減を目指す減災に向けた諸活動の指針づくりや組織体制づくりのあり方について,基礎的な知見を得ることを試みるものである。つまり,これまで巨視的な樹状構造のみで捉えられていた自治体・住民自治における災害対応組織に加え,現実での樹状構造に収まらない構造,及び他の災害関係組織・期間と野相互関係までを微視的に捉え,きめ細かな災害対応方針の確立と組織づくりへの貢献を目指すものである。 以上を踏まえ,研究期間内では以下の三つの具体的な目的を据えている。 (1)災害対応者の災害情報授受に関する関係構造の記述と特性の導出 (2)被災(見込)者のパーソナル・ネットワークに関する関係構造の記述と特性の導出 (3)災害対応者と被災(見込)者の相互ネットワークに関する構造特性の導出と提言 次年度にあたる平成23年度は,主に(2)について平成21年山口・九州北部豪雨において多大な被害を受けた防府市を対象に実施した。 具体的には,(1)で得られた災害対応者の情報伝達ネットワークの中で出現した被災者ノードの特定と連絡内容の把握,及び防府市内で被害が甚大であった地区の自治会内における被災後の活動内容と災害情報伝達構造についてヒヤリング調査をもとに求めた。結果,災害対応と被災現場を結ぶ上で要となる災害対応者と被災者との連絡系統(避難勧告,災害状況,避難所対応,住民の要望,復興作業等)は,主に避難所配置職員と自治会長によって機能しており自治会長が行政と住民の橋渡し的役割を果たしていること,自治会内の活動は,自治会長単独活動型,組織的活動型,行政依存型の3つに暫定的に分類されることが推測された。また,自主防災組織としての住民自治機能は,発災時には連絡網でしか機能していない実態も明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,以下に示す研究期間内の目的である(3)について実施する。方策としては,過去二年間で実施した(1)・(2)の研究成果の再整理及び分析の精緻化を旨とする。一部変更の可能性として,本研究が比較的順調に進展していることもあり,本研究当初では研究対象として予測できなかった:東日本大震災を含めて当該研究の検証を試みたい。なお,申請者は東日本大震災発生より,主に岩手県陸前高田市気仙町へ赴き,当該研究実施の可能性を検討している。 (1)災害対応者の災害情報授受に関する関係構造の記述と特性の導出 (2)被災(見込)者のパーソナル・ネットワークに関する関係構造の記述と特性の導出 (3)災害対応者と被災(見込)者の相互ネットワークに関する構造特性の導出と提言
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