本研究では、農山漁村の中でも条件不利な離島や漁村には、条件不利だからこそ集落を持続していく地域の知恵が内在しているのではないかと考え、住まいや居住にかかわる民俗慣行に焦点をあて、継続的に地域社会を維持・継承していくため知恵や工夫を抽出することを目的としている。 本年度は、三重県志摩市阿児町国府集落の隠居慣行に着目し、文献資料の収集や、予備的ヒアリング調査、および隠居慣行の変容に関するアンケート調査を実施した。アンケートは回収し1次集計をした状態であるので、来年度以降にさらなる集計や分析を行っていくこととする。 文献資料等を調査をしていると、概ね1990年代までは国府集落の隠居慣行は継続していたことが記述から読み取れたが、2000年代以降は少しずつ隠居慣行が変容していることがわかった。また、人口および世帯数の推移をみても1990年代以降に急激な増加をみせており、いわゆるバルブ期を境にして、状況が変化していることが読み取れた。そこで、アンケートの内容は、2011年時点の居住実態とその30年前に当たる1981年の居住実態を把握することで、その違いを明確にするとともに、その過程でどのように隠居が実施されたのか、またはされなかったのか等を、集落に居住する70歳以上の男性、約100名に対して行ったものである。 今後、このデータを通して、隠居慣行が変容しつつも、家族が継承され、地域を維持・継承していくための工夫を抽出して行く予定である。
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