研究概要 |
中山間地では高度経済成長期以降の過疎化,高齢化の進行により集落の存続が難しくなっている。特に豪雪地帯でその傾向は顕著である。しかしそのおかげで伝統的な民家が残っている現状がある。100年150年を経過した民家であっても指定文化財は数%で,大多数は個人の管理によって維持されている。そんななか耐雪対策や家族のライフステージに合わせた増改築が行われ,構造的課題のあるものが少なくないことが中越地震被災後の住宅診断で明らかとなった。増改築の過程で壁量の減少,大工が経験的に構造部材を切断するなど構造的な破綻が起こっている。 本研究は中越地震被災地のなかで伝統的な家屋が相当数残る集落において,(1)耐雪対策として行った屋根形状の変化,中門の付け替え,2階の増設,減築,(2)そして家庭状況や生活様式の変化に伴う増築や改築,減築の実態を明らかにし,構造形状で類型化する。そしてさらに類型ごとに構造的な課題を抽出することを目的に研究をおこなった。 22年度はこれまでの蓄積に加え,平面図をもとに構造架構図をおこすための主要部材の実測,壁量の測定をし,その結果を精密診断ソフトで診断した。結果,当初は北側が壁で閉じられていたため北に寄っていた重心が増改築によって中央部に寄り,重心の偏りは減じていた。しかし図面上のバランスは良いが,実際は接合部が緊結されていないなどの問題が見出された。また接合方法の混在による亀裂なども発生していることが分かった。またアンケートやヒアリングから,後継者がいないことを主因として居住していながら手入れがされていない状況が明らかとなった。次年度は継続して接合部の調査,簡易メンテナンス方法の提示による居住者の意向変化調査を実施する。
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