今ある建物を最大限に利活用するストック型社会への移行は、人口減少と相まって、地域における最終的な生産主体・担い手である中小建設業者、すなわち工務店を中心とした地域の建築生産システム(以下、地域生産システムと略記)に及ぼす影響は大きく、そのあり様に大きな変化・変容が生じることになる。特に、ストック型社会では、改修工事需要が相対的に増すことが想定され、建物を新築するための技術を開発、もしくは習得してきた工務店や関連事業者にはこれまでとは異なる技術・サービスの提供が不可欠になると考える。 そこで、本研究はこのような社会構造の転換の下、既存建物を長期的に使用し続けるための生産活動に重点を置いて住環境を運営していく上で、工務店を中心とした人・物・金・技術・情報などにより構成される地域の建築生産システムに求められる変化や、新たに創出されるサービス・事業等を体系的に整理し、その再編モデルの基盤となる部分を明らかにすることを目的とした基礎研究である。 平成24年度は、特に人口減少・高齢化により新築需要が著しく停滞していると思われる地方の中小都市に着目し、維持管理等の現状関する調査に加えて、平成23年3月に発生した東日本大震災以降の被災地域に着目し、これらの地域で被災した建物を維持管理・補修・改修の動向に関連する調査を行った。その結果、人口減少・高齢化の進む地域においても木造建築の新築のための生産システムを依然と構築しており、今後需要として増加することが予想される性能向上改修などへの対応を図る生産システムに展開していないことが分かった。また、被災地域では、被災した住宅の補修や維持管理は、当該住宅を建築した建築事業者または設計した建築士事務所が対応する仕組みになっており、災害直後に円滑に被災した住宅を点検・補修する仕組みが地域内で連携する等の共助的な仕組みが未だに形成されていないことが分かった。
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