予定していたウクライナ・ハリコフ市での現地調査は、9月にサハリンへの長期出張を命じられたために不可能となった。そのため、ハリコフに関する研究については、市街地図やいくつかの基本文献の入手したにとどまった。しかしながら、京都大学附属図書館における資料収集で、当時のソビエトの雑誌からウクライナ関連の建設関連記事の抜粋を発見し、いくつかの貴重な知見を得たので近々発表する予定である。 これについては、共同研究「ロシアにおける辺境と異境」において、アヴァンギャルドの地方推進と反動との関連性を通した潮流の変遷としてもあわせて報告する可能性を予定している。従来のアヴァンギャルド研究において前衛と反動の展開と対立が空間性・場所性を考慮せずになされてきたことを批判的に検証するものであり、モスクワ型都市計画システムの地方への拡張を考える上で不可欠の研究と考える。 このほか、サハリン出張時に1991年ユジノサハリンスクの都市基本計画2冊分を入手できたのは大きな収穫であった。これにより、ソビエト連邦末期のサハリンにおける都市計画の全貌を明らかにすることができるであろう。 また、サハリン出張時において「チェーホフ来島120周年記念学術会議」が開催され、この席上で「製紙工場の地政学」と題した報告を行った。これは、当該研究の前段階である日本時代の都市形成過程を論じたものであるが、ソ連時代との連関性を論じるべく写真資料を中心とした資料収集を精力的に進めているところである。 また、中央アジアについては現実的に渡航日程を設定することが困難であるため、文献資料の収集を精力的に行い、他日の研究の進捗を期したいと考えている。
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