研究概要 |
ラルフ・アダムズ・クラム(1863-1942)は、日本建築に強い関心を寄せた建築家だった。ボストンのアーツ・アンド・クラフツ運動に参加したほか、来日経験のある宣教師オーサー・ナップのために日本風住宅を設計してもいる。 クラム事務所による津田塾大学キャンパス計画のイメージは、2007年にはじめて公開された。現在クラム・ファーガソン事務所代表のイーサン・アンソニー氏が、事務所の建築図面を整理し出版したのである。(Ethan Anthony, The architecture of Ralph Adams Cram and his office, W.W.Norton&Company,2007)ただ、ここに載せられた図面は限定的であり、また、情報にミスが多い。一連のオリジナル図面はすでに存在せず、記録撮影された高精細の写真が残されるのみである。以下、写真を確認し、得られた情報を記す。 まず、場所は「北海道」ではなく、「東京国分寺」。これは図面に、ローマ字で記載がある。また、制作年も「1919年」ではなく、「1928年8月17日」。また、「T.Matsumoto」という制作者の署名がある。クラム事務所に日本人もしくは日系人が勤めていた事実を示しているが、今のところ個人の特定には至っていない。
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