本年度は、武田五一や本野精吾、上野伊三郎など、1920年代から30年代に京都を拠点に活躍した建築家らと関わりのあった、他分野の組織や団体との関係や活動に焦点を当て、著書や雑誌に掲載された論考や作品、一次資料の調査を行った。 特に武田五一や本野精吾らと京都の老舗、宮崎家具店との協働や、本野精吾や上野伊三郎らと京都の染物屋との協働による真美会の活動、また上野伊三郎や上野リチと群馬県工芸所の協働に注目して調査を行った。 その結果、1920年代から30年代にかけて、京都を拠点とした建築家が、家具や工芸などの建築以外の分野の作家や組織と協働し、建築にとどまらない生活空間全体のデザイン活動を展開したことが明らかになった。 そこで生み出された家具や工芸は、モダンで近代的なもので、ウィーン工房の影響が強いものであったが、同時に京都の伝統的な技法や産業に支えられたものであった。つまり、近代化と京都の伝統産業が融合したところに生み出されたものであった。またそれが建築家と家具店という事業家との協働によって継続的に行われたのは、小さなしかし親密度の高いコミュニティを基盤とした京都ならではのものだったと言える。
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