平成22年度中に行った研究内容、成果は以下のとおりである。 (1)研究期間の開始にあわせて、英国議会文書BPPのうち、日本関連分10巻を購入した。同巻には、幕末から明治初期の横浜、神戸、長崎といった各居留地のイギリス領事報告が収録されている。本年度はこれを閲覧し、各居留地における建築活動やイギリス商人たちの商活動にかんする記録をたどり、関連する情報を整理した。 (2)事前に行った資料調査の成果をまとめ、ジャーディン・マセソン商会横浜店について、慶応年間の大火で焼失した商館の再建計画と、同じ大火で焼失した石造倉庫の再建に関する論文をそれぞれ執筆した。これまで明らかでなかった外国人居留地における外国商館の建築経緯を詳らかにするとともに、商館の再建にあたってイギリス商人たちがどのようなことを考えていたかという問題についても論及した。2つの論文はともに日本建築学会計画系論文集の8月号に掲載された。 (3)8月から9月にかけてイギリスで資料調査を行った。ロンドンのHSBCアーカイブを訪問し、19世紀東アジアのイギリス資本を代表する香港上海銀行の店舗建築に関する資料を収集した。調査の結果、香港上海銀行に関して19世紀の資料は当初期待していたほど多くなく、20世紀初頭まで多少幅を広げて扱う必要性を感じた。また同時にケンブリッジ大学図書館を訪問し、ジャーディン・マセソン商会文書を閲覧、同商会の宅地建物に関連する資料を収集した。
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