本研究は、中国の伝統的都市空間が中華民国期において如何なる過程と内容で近代的再編をみたのかについて解明することを目的として、(1)伝統都市(2)近代都市(3)首都の再編内容を比較検討することで、中国近代都市史の全体像解明への足掛かりを目指そうとするものである。平成22年度は、蘇州・杭州・上海・武漢・南京を対象として現地調査と史料調査を敢行した。現地調査としては、各都市の旧城内において中華民国期の建築物と街区構造の遺構を調査した。特に、再開発が急速に進む上海において旧城内をくまなく事前調査したところ、かなりの遺構を発見することができたことは1つの成果であった。上海については、中華民国期の街区構造や土地利用を示す資料を入手することができたため、現在この分析を進めており、得られた結果をもとに平成23年度ではさらに詳細な調査を行う予定である。史料調査としては、各都市の档案館を中心に訪問し、史料の所蔵状況と閲覧状況を確認した。貴重な史料の所蔵状況が分かったものの、閲覧にはかなりの困難もともなうことが分かった。これを補うために、台湾に所蔵される史料の収集を推進し、とりわけ本年度は中華民国の首都であった南京に関する史料を収集することができた。台湾には中華民国に関する史料がかなりまとまった分量で所蔵されており、また公開閲覧状況も非常に良いため、今後も台湾で集中的に史料収集する予定である。一方で、日本国内にも大陸の史料は所蔵されており、平成22年度は日本の外務省や領事館に関する外交文書を中心に収集した。研究深化の可能性を探るために、複数の都市において現地調査と史料調査を行った結果、(1)蘇州(2)上海(3)南京に対象を絞って検討することで成果を得られる目処を立てることができた。
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