研究課題/領域番号 |
22760489
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
箕浦 永子 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 助教 (70567338)
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キーワード | 伝統都市 / 近代化 / 都市再編 / 近代都市計画 / 中華民国 / 蘇州 / 上海 / 南京 |
研究概要 |
本研究は、中国の伝統的都市空間が中華民国期において如何なる過程と内容で近代的再編をみたのかについて解明することを目的としている。平成23年度は、(1)蘇州(2)上海(3)南京における旧城内の近代的再編について、集中的に取り組むことを目標とした。 (1)蘇州については、収集済みの史料をもとに分析を進め、研究発表を行った。清末から中華民国期に実施された都市改造計画に直面した際に、民間の人々がどのように対峙したのか、商人を統括する組織である蘇州商会に着目し、「清末民初の蘇州商会と社会公共事業」を発表した。また、蘇州の都市再編について、これまでの成果を「中華民国期の国家形成と蘇州の都市再編」に整理し発表した。(2)上海については、前年度の成果を受けて、旧城内の全範囲について街区および近代建築の残存状況を調査し、全貌を把握した。上海は急速に再開発が進んできたが未だ残存状況が良く、本調査によって清代と中華民国期の都市構造を復原的に考察することが可能となった。また、上海については史料収集も順調に進み、中華民国期の上海市工務局が実施した都市再編・都市改造に関する史料を収集することができた。現在、現地調査結果の整理・分析、収集史料の読解を進めている段階であり、興味深い結果が得られているため、最終年度での論文発表の準備を進めている。(3)南京については、台湾の国史館にて南京首都計画に関する史料を収集し、検討を行った。また、中華民国期の国家形成と都市再編の方針について検討を行った。 他に、平成23年度は、近代都市・租界都市として上海の比較対象に想定していた天津の調査を実施した。しかし、天津の旧城内は全範囲において開発されており、清代および中華民国期の復原的考察が難しいことが判明したため、今後の分析は史料に頼らざるをえない見込みである。 以上のように、平成23年度も実施計画を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究対象地として想定していた全都市の調査が終了し、集中的に研究を推進する都市を浮き彫りにすることができた。さらに、研究推進都市における現地調査および史料収集も順調に進んでおり、研究成果の帰着点が見えつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は最終年度にあたるため、今後は現地調査および史料収集の補足調査を実施する。また、現地中国側の研究者を訪問して意見交換の機会を持ち、研究成果の内容を議論するとともに今後の研究発展について意見交換を行う。これらの推進方策によって、これまでの調査結果を整理・分析し、論文発表や学会発表において精度の高い研究成果を発表することを目標とする。
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