本研究は、中近東・古代における石造ドーム建築に関する某礎的研究である。ローマ時代最盛期の中近東には、高度な石造技術が発達し、初期ペンデンティブの構造を見るうえで、重要な遺構が少なくない。本研究では、近年目覚ましく発達しているデジタル三次元計測技術を用いて詳しい現地調査を行い、中近東・古代における石造ドーム建築の構造的特徴と歴史的位置づけとの双方を明らかにする。 調査対象の一つであるヌウェイジスは、アンマン市内に残るローマ時代の墓である。これまでの調査で、ヌウェイジスは、石造のペンデンディブ・ドームが残る遺構の中で、最も古いのの一つと考えられることが分かっている。重要な遺構であるにもかかわらず、これまで全く調査されてこなかった。そこで研究代表者は、ヨルダン考古局の許可を得て、調査開始した。 ヌウェイジズは、一辺約12mの正方形平面の建物で、四隅に小さな室を設けている。トンネル・ヴォールトを十字に配置し、交差部にペンデンティブ・ドームを載せている。建物の四つの立面には、イオニア式の付け柱があり、上部はシリア・ローマによく見られる装飾が多いエンタブラチュアが載る。本年度は、二度現地調査を実施し、ノン・リフテクティブの光波測距儀を用いて、ドームを中心に計測し、平面図、断面図などの主要な図面を作成した。ヌウェイジス以外にも、類似した石造ドームの遺構があることから、来年度以降も調査を継続する予定である。
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