研究課題/領域番号 |
22760495
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
角 哲 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90455105)
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キーワード | 日本製鐵株式會社 / 広畑製鐵所 / 新興工業都市計画 / 住宅営団 / 製鉄業 / 都市形成 / 福利厚生施設 / 近代 |
研究概要 |
2年目は(1)社宅エリア内に建設された福利厚生施設の種類と施設配置(2)新興工業都市計画(3)住宅営団の関与について把握することを目的に研究に取り組んだ。 (1)については『広畑日誌』を元に建設年と種類を把握しリスト化した。また、社史や郷土写真集から古写真を収集した。その上で、社宅管理事務所所蔵の施設配置図で位置を特定し、一部の施設については横河工務所が所蔵する設計図の閲覧と複写を行なった。この過程で、福利厚生施設中、遠藤新設計の京見会館(S16)には、長谷部・竹腰事務所案があることも明らかになった。ほか、戦後のRC造アパート社宅は、石本設計事務所や住宅公団が設計を手がけていることも設計図から把握した。さらに、現存する福利厚生施設の現況把握を行なった。しかし、木造社宅の図面は発見できず、住宅の詳細の把握は今後の課題となった。 (2)については国立公文書館所蔵『公文雑纂』所収の「都市計画決定の理由書」と付図により、道路の種類と幅員、用途地域を把握できた。併せて国の方針である新興工業都市計画を契機に姫路市や周辺町村が都市計画決定を行ない、さらには合併を模索する様が理解できた。 (3)については『広畑日誌』から住宅営団開発の住宅地名を把握したが場所が特定できなかった。よって、国土地理院所蔵の米軍撮影空中写真の購入、兵庫県立図書館所蔵の都市計画図を遡り、大凡の位置を特定すると共に、製鉄所OBの方に聞き取りを行なった。このうち、苫編に旧木造住宅と判断できる住宅を確認できた。但し、住宅営団の元資料の把握はできなかったため、今後、西山文庫での資料収集を行ないたい。 調査の過程で、新日鉄都市開発が戦後のRC造アパート社宅図面と配置図を所蔵してることを確認したが、仔細を把握することができなかったため、研究費の一部を繰り越し、次年度に閲覧と複写を行なうこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標をおおむね達成しているが、木造社宅の図面に関しては既に取り壊されているため、社宅管理事務所では管理しておらず情報を入手することができなかった。辛うじて得られたのは、夢前社宅の配置図に記される単線による平面図と京見社宅の幹部職員社宅(配置図の住宅外形と照合すると所長社宅)1棟のみである。 また、住宅営団について、営団の元資料にあたることができなかったこと、正確な敷地の特定ができなかったことが今後の課題としてのこされた。さらに、9月に実施した現地調査の際、新日鉄都市開発所蔵の戦後のRC造アパート社宅図面の所在を確認したが、フィールドワークに多くの時間を割いたため資料の詳細を把握するに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度、住宅営団開発の敷地を特定するため、法務局で旧土地台帳と付図を閲覧・複写し、その全容を把握したい。また、これまでは国レベルの資料を中心に収集を行なって来たが、兵庫県公館や東京市政調査会など、地方行政資料の把握にも務めたい。その上で、室蘭や釜石のほか、初年度に視察を行なったドイツなど海外の事例との比較を行ない、共通点と相違点を把握したい。
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