年度の当初より計画していた奈良時代における造営僧である実忠に関する研究会(実忠研究会)を、小岩正樹氏(建築史)・清田美季氏(古代文献史)・児島大輔氏(美術史)とともに立ち上げた。この研究会によって、奈良時代の造営に深く関与した実忠について、学際的な検討をおこなうことができた。今後も継続して研究会を開催し、さらなる検討をおこないたい。 地方の現地説明会(武蔵国分寺)や地方遺跡のシンポジウム(武蔵国の国司館遺跡の発掘速報展)、奈良文化財研究所における「古代官衙・集落研究会」などに、積極的に参加した。 古代建築史に関する研究会である「古代建築を読む会」において、奈良時代における「楼」建築に関する考察と、東大寺創建大仏殿に関する検討について発表をおこなった。 礎石・掘立柱を併用する建物の先行研究及び発掘事例を収集し、考察をおこなった。特に平城宮第一次大極殿院の東西楼について、その施工方法についての検討をおこなった。 出土した建築部材について、山木遺跡および小谷地遺跡の出土部材の調査をおこなった。また当研究所の発掘調査によって出土した井戸枠(平城446次調査)についても実測調査を行った。 当初の予定通り、六国史、三代格などの文献史料を中心に、造営状況、維持管理、取り巻く社会の実態を分析し、審査付学術雑誌(『日本建築学会計画系論文報告集』『建築史学』)や学会発表を通して、その成果を公開した。 これらの結果、奈良時代の在地における造営技術者および造営技術者集団の存在を明らかとすることができた。
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