金属ガラスにおけるアモルファス-準結晶-結晶間の構造的相関を探るため、Fe基多元バルク金属ガラスである(Fe_<0.5>Co_<0.5>)_<72>B_<20>Si_4Nb_4およびFe_<48>Cr_<15>Mo_<14>C_<15>B_6Tm_2合金を用いて、アモルファス-準結晶-結晶構造変化の高分解能像法を用いた観察を試みた。しかし、本合金系で得られる準結晶構造は非常に規則度が低く、粒径も小さいため、明瞭な像を得ることが困難であった。そこで、比較的規則度が高く、大きい粒径の準結晶が生成されるZr系金属ガラスに注目して研究を続けることにした。また、予定していた高分解能観察だけでは得られる構造情報が不十分と考えられたため、オングストロームビーム電子回折を用いたZr系金属ガラスの局所構造解析手法の確立をまず試みた。収差補正走査型透過電子顕微鏡を用い、特注の小さい集束絞りを用いることにより、ビーム径0.3~0.4nmの準平行ビームを得ることができた。これによって、非常に狭い領域からの電子回折パターンを撮影することが可能となり、金属ガラスの有力なモデルとされる原子クラスター(原子10数個から成る)から得られる電子回折パターンに類似したパターンを実験で得ることに成功した。これにより、これまで試料全体から得られるハロー回折曲線(平均構造情報)から推察していた金属ガラスの局所構造の特徴を、直接観察することができるようになったため、今後の準結晶および結晶構造との相関を調べる上でも、非常に有効な方法となると考えられる。
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