研究概要 |
本研究の目的は,サイズ・構造に依存した合金ナノ粒子・合金バルク表面の相安定性を予測するための手法の開発と応用(H22年度-H23年度),及び触媒特性の系統的評価(H23年度)にある.研究は申請書の計画通り順調に進んでおり,H23年度は,H22年度で作成した積層構造変化を効率的に取り扱えるVLCE法のプログラムを用いて,最稠密面の積層構造が変化しうるPt-Ru2元系合金への適用を行った.その際,対称操作で構築されるaugment matrixに関する演算子の満足する条件からVLCEの相互作用を厳密に求める手法を開発し,エネルギーの予測精度を飛躍的にあげることに成功した(Physical Review B誌:in print).この手法をPt-Ru合金に適用し,合金表面の内部エネルギーに対する原子配置と積層構造の相関の定量評価に成功した.また,一般に表面近傍での安定な積層構造は表面組成に顕著に依存することや,Pt-Ru合金では6個の安定な表面構造があり,それらの積層構造はfcc,hcpを含め4種類に分類されることを初めて明らかにした.この結果はPhysical Review Letters誌に投稿準備中である.また,合金の安定性に対する格子系の効果についても吟味し,"joint energy gain"という新しい概念で格子振動の寄与が一般的に記述できることを明らかにした.これまでの研究で得られた合金表面・ナノ粒子の一連の安定・準安定な構造に対して分子吸着エネルギーを計算し,Pt系合金では一般にdバンドの1次と2次モーメント,およびPt原子と隣接する原子の組成が吸着エネルギーに支配的な寄与を及ぼしていることを明らかにした.以上から,サイズ・構造に依存した合金ナノ粒子・表面の相安定性の精確な予測とその触媒特性の系統的評価を可能にする一般的な理論計算の手法の開発に成功し,当初の目標を達成した.
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