研究課題
非晶質酸化物(ガラス)の結晶化は新機能材料創製において有用な一方、過冷却液体-結晶相転移の過渡状態は今なお未解明な点が多い。本課題では、非晶質固体の非弾性光散乱の低エネルギー領域に存在する非対称かつブロードな励起バンド「ボソンピーク」のその場観測により非晶質固体の緩和現象に伴う構造秩序化(核形成・結晶成長)および相転移メカニズムの解明を試みた。以下に得られた主な成果を記す。1.昇温・結晶化過程におけるボソンピークの研究に好適なNb_2O_5高濃度含有酸化物ガラスを開発し、ボソンピークのその場観測によりナノメトリックな不均一領域の存在および結晶核生成に関する重要な知見を得た。2.BaO-SiO_2二元系ガラスを作製し、低波数非弾性光散乱スペクトル・透過型電子顕微鏡観測によりガラス構造および結晶化モルフォロジーなどを調査した。その結果、均一核形成プロセスにはガラス構造と析出結晶相との構造的次元の一致/類似が重要であることを見出した。3.非晶質sanbornite(BaSi_2O_5)におけるその場ラマンおよびボソン観測を実施し、ガラス転移温度よりはるかに低温での構造緩和を実証した。またBaリッチ領域の存在とガラス骨格の低次元構造が結晶核形成の起源になることを提唱した。4.ガラス融液冷却時にすでに内在する不均一構造に着眼し、酸化物半導体であるZn_2GeO_4ナノ結晶が析出した透明結晶化ガラスの作製およびナノ結晶内に格子間Zn欠陥の選択的導入に成功した。またこの結晶化ガラスからの特異な長残光特性の発現を見出し、ナノ不均一性を利用した欠陥導入による新規機能発現を実証した。
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Applied Physics Letters
巻: 97 ページ: 071906-1-071906-3
Journal of Applied Physics
巻: 108 ページ: 063507-1-063507-5
巻: 108 ページ: 103519-1-103519-5