研究課題
酸化物非晶質固体の構造およびその秩序化ダイナミクスは、固体物理と材料科学の両面における重要なトピックであり、そのメカニズム解明が望まれている。本研究課題においては非晶質固体において普遍的に観測される低波数励起バンド「ボソンピーク」をプローブとして用いた構造緩和および過冷却液体-結晶転移のその場観察を実施し、多成分系酸化物ガラスの構造秩序化に関する研究を行った。以下に得られた主な成果を示す。1.多成分系ガラスにおけるワイドギャップ酸化物半導体Zn_2GeO_4ナノ結晶への格子間Zn欠陥の発生メカニズムを解明した。熱処理により発生する相分離とカーケンダル効果の相乗効果によりZn濃縮されたナノメトリックな不均一領域が発生し、その後その領域が秩序化することによりZnイオンがZn_2GeO_4構造に選択的に捕獲されることを非弾性光散乱および透過型電子顕微鏡などにより実証した。2.Mn^<2+>ドープZn_2GeO_4ナノ結晶化ガラスの創製に成功し、これからの高輝度緑色発光および蓄光特性を確認した。発光および残光スペクトルが非晶質Siの分光感度と適合することから、薄膜太陽電池セルの変換効率を向上させるスペクトルコンバーター、さらに昼間の太陽エネルギー中の紫外光を蓄積し夕方~夜間発電をアシストするタイムシフターの概念・材料提案を行った。3.過冷却液体-結晶転移においてボソンピークのダンピングおよび高波数シフトが観測されるが、後者の事象の説明はこれまで成されていなかった。均一核形成を示す酸化物ガラスにおいてボソンピークの昇温過程におけるその場観測を行うことにより、発生した結晶核/微結晶と過冷却液体との相互作用が過冷却液体の見かけの粘性を増加させ、その結果としてボソンピークの高波数シフトを引き起こすモデルを提案した。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件)
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