研究概要 |
本研究課題では、「欠陥制御に基づく高機能性材料開発」を最終目標とし、機能性セラミック材料における欠陥の役割を解明する研究に取り組んだ。具体的には、濃度・温度・雰囲気をパラメータとしたその場測定を実施し、動作環境下にある材料のダイナミック(動的)な欠陥状態の変化を調べた。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)紫外・可視吸収分光法と電気特性評価を用いて、半導体酸化物である酸化スズ(SnO_2)と酸化亜鉛(ZnO)の還元ガスに対する応答を動的に調査した。その結果、両者とも典型的なn型半導体酸化物であるにも関わらず、ガス雰囲気における導電性発現メカニズムが異なることが分かった。 (2)透光性薄片試料を用いて、チタン酸バリウム中の欠陥生成を光学的に評価した。その結果、チタン酸バリウム中における欠陥には2種類存在し、還元雰囲気では酸素空孔、酸化雰囲気では過剰酸素が特に重要な欠陥系であることが分かった。電気特性評価と合わせた結果、チタン酸バリウムは比較的過剰酸素を含み易く、300℃以上の空気雰囲気のp型伝導性の原因になっていることが示唆された。還元雰囲気で処理した場合材料中の過剰酸素から放出され、Ti^<3+>による着色をもたらしながら最終的に酸素空孔による欠陥準位の生成を引き起こすことが明らかになった。これらの結果は、還元して着色したチタン酸バリウムにおいて電気伝導性が生じず、強還元して初めてチタン酸バリウムにn型半導体性が生成する現象を定性的に説明していた。 (3)水溶性チタン酸バリウム前駆体を用いてドープチタン酸バリウムを作製した結果、Ba^<2+>,Ti^<4+>の中間的なイオン半径を有する希土類元素を添加することで置換サイトの制御が可能となり、その電気特性をp~n型に容易に制御できることがわかった。
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