前年度ゾルゲル法によりLi_2O-Nb_2O_5-SiO_2系および、Gd_2O_3-MoO_3系にて非晶質膜の結晶化挙動に付いて検討を行った。その結果いずれの系においても安定で平滑な非晶質膜が得られ、結晶化によりそれぞれニオブ酸リチウムLiNbO_3およびモリブデン酸ガドリニウムGd_2(MoO_4)_3が形成することを見出した。そこで本年度はこれらの非晶質膜にレーザー誘起結晶化による結晶パターン化を実施した。申請者らがこれまでに開発を進めてきたレーザー誘起結晶化装置を基本に、吸収の高い波長(808nm)と高出力(~5W)のレーザーを搭載しCu^<2+>などの吸収イオンが効率的に加熱できるように装置を構築した。Li_2O-Nb_2O_5-SiO_2膜へのLiNbO_3パターニングでは基板上にまず発熱層としてCuO-SiO_2膜を形成し、その上に目的層であるLi_2O-Nb_2O_5-SiO_2膜を形成した。600℃にて熱処理を施す事で発熱層および目的層どちらも非晶質状態の2層膜の作製に成功した。得られた2層膜にレーザーを集光照射したところ集光部の構造変化を確認し、偏光顕微ラマン分光によりLiNbO_3結晶に変化している事を確認した。目的層の膜厚を1μmに固定し発熱層の厚さを変えてレーザー照射による結晶化挙動を比較したところ、膜厚が薄いと何も変化が起こらず、厚くなると瞬間的に剥離してしまう結果が得られ、結晶化のためには発熱層の膜厚に最適値がある事を見出した。 また、Gd_2O_3-MoO_3系にて非晶質膜へのレーザーパターニングでは、CuO-SiO_2発熱層へGd_2O_3-MoO_3薄膜を製膜すると発熱層の還元が生じるため、目的層1層のみとし、レーザー光の吸収イオンとしてSm^<3+>イオンをGd^<3+>と置換し非晶質膜を作製した。レーザー照射によりα型のGd_2(MoO_4)_3が形成したことから、β'層が準安定で存在できる温度領域よりもかなり高温に達していると考察した。
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