平成23年度の研究においては金属微粒子として可視短波長領域にプラズマ振動数がある銀微粒子を用い、SiO2によって表面を均一に被覆することで、コアーシェル型の金属@SiO2微粒子分散型散乱媒質を作製した。媒質内にレーザー色素を導入しランダムレーザー発振測定をおこない、系内での光の振る舞いについて考察した。交互積層法は正および負に帯電した電解質ポリマーを交互に吸着させることで薄膜を作製する手法であり、積層過程で銀ナノディスク(水溶液中で負に帯電)を挟み込むことで高密度に銀ナノディスクを堆積させることができた。また、銀ナノディスクを堆積させた後に電解質ポリマーを積むことで、微粒子と色素ドープ膜との距離をナノメートルオーダーで制御することが可能であることがわかった。また、還元条件および共存する高分子の量を適切に制御することで銀微粒子の形状およびサイズ、ならびに被覆層であるSio2の厚さを制御することに成功した。 作製した銀微粒子をR6Gをドープしたアルコール溶液に懸濁し、532nmのパルスレーザー光で励起することでランダムレーザー発振を確認した。レーザー発振閾値はシェルの厚さにより変化した。この閾値のシェル厚さ依存性を金属-色素間のエネルギー移動および表面プラズモンによる局所的な電磁場の増強の両者の寄与により解釈した。 金属微粒子に酸化物薄膜を斜め蒸着することで構造異方性を有する金属ナノ構造体薄膜を作製し、局在表面プラズモン共鳴周波数付近で波長選択的に複屈折率が増幅することを見いだした。局在表面プラズモン周波数がマトリックスの誘電率に敏感に反応することがこの現象の背後にあることを明らかにした。常光と異常光の屈折率差は0.3に達し、自然界に存在する典型的な複屈折材料を超える値をしめした。 これらの結果は原著論文4報、国際学会発表4報、国内学会発夷2朝にまとめた。
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