本年度は、五酸化バナジウム・シート(厚さがナノメートルサイズ、幅がマイクロメートルサイズ)のアルミニウム箔上への高密度成長技術を用いて、この系を正極とするリチウムイオン二次電池の電気化学特性を種々の条件で調べた。初回放電曲線から、バナジウムイオンの5価から4価への還元、さらに一部は4価から3価への還元が起きて、リチウムイオンが五酸化バナジウムにモル比1を超えて挿入されていることがわかった。充放電回数に伴い、充電曲線は形状が変わらず電位上昇が4サイクル目まで見られる一方、放電曲線は1サイクル目と2サイクル目以降では形状の違いが現れるとともに、電位が降下する傾向にあった。初回放電で一部構造変化が起きていること、充放電初期(3サイクル目ぐらいまで)において、内部抵抗の増加が起きている可能性が示唆された。これらいくつかの課題は残るものの、結着剤等を用いないリチウムイオン二次電池の正極構造として、十分に機能することがわかった。
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