全固体Liイオン電池の超高出力化を最終目標として、(1)配向制御したエピタキシャル正極活物質薄膜の作製、(2)硫化物と違い大気中で安定且つ高いイオン伝導性をもつ酸化物固体電解質のエピタキシャル薄膜化、(3)高容量をもつ結晶性負極活物質のエピタキシャル薄膜化、またはLi金属薄膜の蒸着・Li-In合金の圧着、最後にこれらを積層することで、全固体エピタキシャルLiイオン電池を創成する。複酸化物の薄膜化に長けるパルスレーザー堆積(PLD)法を用い、成膜条件の厳密制御によりバルク単結晶品質のエピタキシャル薄膜を得るとともに、原子レベルで連続的なヘテロエピタキシャル界面を作製し、超高出力全固体Liイオン電池の薄膜モデルを作製する。 今年度は正極活物質となるLiCoO_2と、LiCoO_2と相性のよい酸化物集電体SrRuO_3のエピタキシャル薄膜化を行った。高結晶性のLiCoO_2を得るには、化学量論組成のLiCoO_2をターゲットに用いた場合、材料が蒸発するギリギリの低いレーザーエネルギー密度が有効であることがわかったが、充電容量を稼ぐために厚い薄膜を得ようとすると24時間以上の成膜時間がかかり実践的ではなかった。この実験を通して、結晶性は得られる薄膜の組成によっていること突き止めたため、薄膜堆積速度がある程度稼げる高いエネルギー密度でも高結晶性の薄膜が得られるよう、予め組成を変調したターゲットを用いると高い結晶性と堆積速度を両立できることがわかった。SrRuO_3においても同様に、堆積した薄膜の組成に結晶性が大きく左右されることがわかり、成長条件を最適化することで高結晶性且つ配向を制御したエピタキシャル薄膜を得ることに成功した。
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