全固体Liイオン電池の超高出力化を最終目標として、①配向制御したエピタキシャル正極活物質薄膜の作製、②大気中で安定且つ高いイオン伝導性をもつ酸化物固体電解質のエピタキシャル薄膜化、③高容量をもつ結晶性負極活物質のエピタキシャル薄膜化、もしくはLi金属薄膜の蒸着・Li-In合金の圧着、最後にこれらを積層することで、全固体エピタキシャルLiイオン電池を創成する。複酸化物の薄膜化に長けるパルスレーザー堆積(PLD)法を用い、成膜条件の厳密制御によりバルク単結晶品質のエピタキシャル薄膜を得るとともに、原子レベルで連続的なヘテロエピタキシャル界面を作製し超高出力全固体Liイオン電池の薄膜モデルを作製する。 最終年度である今年度は酸化物固体電解質であるLi0.33La0.56TiO3(LLTO)のエピタキシャル薄膜のさらなるLiイオン伝導度向上を目指し、成膜条件制御では限界のある薄膜の組成制御方法の一つとして、出発組成となるターゲットの組成を変調することでさらなる高性能化に成功した。 Li化合物のPLD法による薄膜作製では一般にLiのみが失われると考えられ、Li過剰のターゲットが用いられるが、この場合に得られた薄膜の異相を詳細に解析すると、低温ではLi過剰の結晶相であるLi4Ti5O12やLi2La2Ti3O10が異相として存在し、Liのロスは高温での蒸散により起きることが示唆された。一方で基板温度を上げると、今度はLi量は減るがLa過剰のLa2Ti2O7が異相として析出し、その歪んだ結晶構造から主相であるLLTOの結晶性が大きく失われることがわかった。結果としてLi過剰La不足のLi0.5La0.5TiO3ターゲットにて成膜条件を整えることで原子レベルで平坦な表面を持ち、-4剰S/cm後半のほぼバルクと同等なLiイオン伝導度をもつエピタキシャル薄膜が得られることがわかった。
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