研究課題/領域番号 |
22760519
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 宏平 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50525855)
|
キーワード | 抵抗変化メモリー / 酸化物デバイス / 遷移金属酸化物 / 酸化還元 / ナノワイヤ / 半導体物性 |
研究概要 |
遷移金属酸化物で発現する電界誘起抵抗変化現象の微視的メカニズムの解明を軸に、新規デバイス創成への設計原理構築に取り組んでいる。本年度の具体的成果を以下に記す。1.ナノワイヤ型デバイスの抵抗スイッチング特性評価:前年度にスイッチング動作を確認したNiナノワイヤ素子に対し、抵抗変化サイトの特定、組成変化の評価を行った。初期高抵抗化スイッチングにより生じる構造変化領域において、導電性の消失と酸素濃度の増加を導電性AFM・SEM-EDXから明らかにした。さらに、高抵抗化スイッチングの駆動源を特定すべくスイッチング特性のワイヤサイズ依存性を詳細に評価した結果、電流密度が重要なパラメータであることが分かった。これら観測結果は、current-induced local oxidationとして知られるナノスケール酸化現象によるNiO相の生成を強く示唆する。酸化還元の決定的証拠を得るためのアプローチとして、局所電子状態解析機能を有する放射光3次元ナノビーム光電子分光の予備実験に取り組んだ。2.CU-Cu_2O相混合薄膜におけるフォーミングフリー動作の実現:Cu金属相がCu_2Oマトリックス中に分散し極微金属ネットワークを形成する相混合薄膜を反応性スパッタにより作製し、Cu相体積分率とスイッチング挙動との相関を評価した。Cu金属相の増加に伴い、初期絶縁破壊操作フォーミングを要しないスイッチングモードへと変化することを見出した。製膜条件制御のみでフォーミングブリー素子を実現できる簡便な手法として期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画前半で達成すべき、二次イオン質量分析による酸素イオン空間分布の評価、ナノワイヤ型デバイス作製プロセスの確立、に成功している。これら一連の成果により三件の招待・依頼講演を行っており、研究全体として順調に進展していると言える。ナノワイヤ型デバイスを用いた放射光3次元ナノビーム光電子分光実験の予備測定も実施しており、研究目標に掲げたナノスケール相変化(酸化還元)の直接検出が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
ナノスケール酸化還元の直接検出を目指す上で、二次イオン質量分析などの破壊分析や特殊な試料加工を要する分析法では、(1)プロセス中に導入される酸素欠損と本質的な還元効果との識別、(2)それらの試料間比較、が困難であることが分かりつつある。非破壊分析かつ高い空間分解能・電子状態解析機能を有する放射光3次元ナノビーム光電子分光に分析手法を絞り、導電性金属ネットワーク及びその酸化還元の直接検出の実現へと進める。
|