YBCO単結晶膜に圧縮ひずみを負荷する準備として、SrTiO3(STO)基板をCu-Be板に接着し、4点曲げによりひずみを負荷する装置を導入した。種々の接着剤を用いて、基板をCu-Be板に固定し、基板上に貼付したひずみゲージにより、基板表面に発生しているひずみをモニターした。その結果、エポキシ系樹脂Stycast2850と硬化剤LV24を用い、硬化条件を最適化することにより、-0.6%までのひずみ負荷に成功した。 STO基板上にYBCO膜をPLD法で成膜し、電極付けのためのAu蒸着および、接触抵抗低減のための酸素アニールを施したサンプルを作製した。4端子法による臨界電流測定および測定部の直近にひずみゲージを貼付可能であるようなパターンを有するガラスマスクを設計した。これを用いて、フォトリソグラフィーにより、ブリッジ形状を有するYBCO膜を形成した。 上記サンプルをCu-Be板に接着し、4点曲げ法によりYBCO膜に圧縮ひずみを負荷した状態で臨界電流を測定した。その結果、自己磁場下において圧縮ひずみに対して臨界電流がべき乗則に従う振る舞いを示し、-0.15%の負荷ひずみにおいて臨界電流がピークを持つことが確認された。 以上の結果から、単結晶基板上の超伝導薄膜に対して、ひずみを負荷した状態で臨界電流を測定する実験システムの確立に成功した。今後は、磁場を印加した状態での臨界電流のひずみ感度の変化に着目して研究を進める予定である。
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