研究概要 |
本研究では,連続体を粒子の集合として表現し,その運動を解析するMPS (Moving Particle Semi-implicit)法を用い,繊維強化プラスチックの射出成形における流動シミュレーションを構築した。MPS法を利用することで,樹脂の流動は粒子の運動で表現される。また,強化繊維モデルとして複数の粒子を直線状に連結させ,それらを剛体として扱った。構築した解析を用い,T字分岐部におけるガラス繊維(長さ1mm)/ポリプロピレン複合材料の射出成形シミュレーションを実施し,繊維の流動を予測した。 また,X線CTによってT字分岐部におけるガラス繊維/ポリプロピレン射出成形材の断層画像を取得し,画像処理によってガラス繊維を抽出した。それらの繊維の配向角と長さを観察し,配向角ごとに積算することで,ある領域における繊維配向の存在確率分布(例えば角度0~10゜に存在確率10%,10~20゜に15%,…)を求めた。 T字分岐部における解析結果での剛体繊維の配向を実験結果と同様に積算することで解析的に繊維配向の存在確率分布を求め,観察結果と比較することで,以下のことを明らかにした。(1)剛体繊維が壁面近傍での速度勾配(せん断)に起因して壁面と平行に配向すること,ならびに,流路中央部ではランダム配向になるメカニズムを明らかにした。コーナー部でも上と同様な繊維配向が見られた。(2)従来の成形解析では予測できなかった繊維の凝集を再現した。(3)分岐部における繊維配向の存在確率分布に関する解析結果は実験結果と一致し,本成形流動解析が妥当であることを示した。(4)流路中央部における解析結果の繊維配向角別の存在確率のバラツキは,比較対象となる繊維の数を増加させれば軽減可能である。
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