研究課題
H22年度は主に課題(1)「Li^+イオンおよび(BH_4)-錯イオンへの陽・陰イオン置換によるイオン伝導特性の向上」に取組むとともに、課題(2)「高容量新規電極材料の開発」を進めた。課題(1)「Li^+イオンおよび(BH_4)-錯イオンへの陽・陰イオン置換によるイオン伝導特性の向上」・LiBH_4以外の錯体水素化物として、LiAlH_4、Li_3AlH_6、LiNH_2のリチウムイオン伝導特性を交流インピーダンス法を用いて評価した。その結果、室温でのリチウムイオン伝導率はそれぞれLiAl_4:9×10^<-9>S/cm、Li_3AlH_6:1×10^<-7>S/cm、LiNH_4:1×10^<-9>S/cmであり、LiBH_4の低温相と同程度であることがわかった。Li_3AlH_6のイオン伝導特性を向上させるために、(AlH_6)^3-錯イオンの一部をCl^-またはI^-で置換した。その結果、陰イオンの価数の違いによる格子空孔の生成によって、イオン伝導に要する活性化エネルギーが低下し、さらに室温でのイオン伝導率が4~10倍増大することを明らかにした。また、LiNH_2の(NH_2)-錯イオンの一部をI^-で置換することにより、高速リチウムイオン伝導(室温で1×10^<-5>S/cm)を有する新規錯体水素化物Li_3_N2IH_4の合成に成功した。放射光施設を利用した高輝度X線回折測定を用いてLi_3N_2IH_4の構造解析を行った結果、高速イオン伝導の要因となる特徴的な層状構造を有することが判明した。・第一原理分子動力学計算を用いてLiBH_4高温相におけるLi^+の拡散挙動を解析した結果、Li^+の±c軸方向へのダンベル型分布による格子間準安定サイトの生成がLi^+の拡散を促進すること、すなわち、LiBH_4高温相が真性的な高速イオン伝導体であることを明らかにした。課題(2)「高容量新規電極材料の開発」LiHとB(ホウ素)、C(炭素)を1.1:1:1のモル比で混合し、熱処理(1050℃、1h、Ar 1atm)を施すことにより、MgB_2と同様の層状構造を有するLiBCがほぼ単相で得られることを確認した。本研究の結果、LiBH_4以外の錯体水素化物においても、イオン置換を施すことにより高速リチウムイオン伝導が発現し得ることを初めて報告した。固体電解質としての錯体水素化物の材料バリエーションを増やす指針が得られたことの意義は極めて大きいと確信する。
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http://www.hydrogen.imr.tohoku.ac.jp/