本研究課題の目的は、固体酸化物形燃料電池の代表的燃料極であるNi/YSZを計算対象とし、その電極での燃料酸化反応経路解析を電極の存在をあらわに取り込んだ第一原理非平衡グリーン関数計算で実行し、そこから得られる電気化学反応素過程の速度論的情報を動的モンテカルロ計算に取り込むことで、3次元電極構造を反映した形で、交換電流密度のメソスケールシミュレーションを達成することである。研究実施計画にもとづき、H22年度はNi/YSZ燃料極での燃料酸化反応の素過程解析を行い、Ni表面上での酸素空孔移動障壁とNi/YSZ界面近傍での酸素空孔移動障壁との違いを検討した。なお、第一原理非平衡グリーン関数計算による反応・イオン移動解析の実行は多大な計算コストを要するため、通常の第一原理計算による経路探索を行っておくことが効率のよい研究の進め方であり、H22度はこの"通常の第一原理計算"による反応経路探索を行った。一方、H22年度の計画には含めていなかった動的モンテカルロ計算プログラムの整備も同年度に開始し、三相界面近傍でのイオン移動(拡散)シミュレーションを実行できるように整備した(これにより、空気極の反応探索を次年度以降の開始へと変更した)。本研究で得られた反応過程解析における知見はもとより、構築しつつあるメソスケール動的モンテカルロシミュレーションプログラムの有効性は、燃料電池研究はもちろん、さらに多方面における適用が想定でき、ここでの成果は大変大きいものと言える。
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