研究課題/領域番号 |
22760534
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
多田 朋史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特任講師 (40376512)
|
キーワード | 第一原理計算 / 非平衡グリーン関数 / 燃料電池 / 燃料酸化反応 / 動的モンテカルロ |
研究概要 |
本研究課題の目的は、固体酸化物形燃料電池の燃料極であるNi/Yszを研究対象とし、その電極での燃料酸化反応の反応経路解析を電極の存在をあらわに取り込んだ第一原理非平衡グリーン関数計算で実行し、そこから得られる電気化学反応素過程の速度論的情報を動的モンテカルロ計算に取り込むことで、3次元電極実構造を反映した形で、交換電流密度のメソスケールシミュレーションを達成することである。研究実施計画にもとづき、昨年度はNi/YSZ燃料極での燃料酸化反応の素過程解析を行い、水素スピルオーバーメカニズムによる燃料酸化過程の全体像がまぼ見通せる段階にまで到達した。ただし、第一原理非平衡グリーン関数計算による反応解析の実行は多大な計算コストを要するため、通常の第一原理計算による経路探索を行っておくことが効率のよい研究の進め方であり、昨年度はこの"通常の第一原理計算"による反応経路探索を行った(ここで得られた反応経路をもとに第一原理非平衡グリーン関数計算による解析は本年度にて行う)。一方、動的モンテカルロ計算をメソスケールで実行するためのプログラム整備にも着手し、任意のユニット構造データ(複数可)を三次元的に積み上げ、その構造体に対して発生可能な反応・イオン移動イベントをリストアップし、動的モンテカルロ計算が実行できる体制をほぼ構築した。その動的モンテカルロプログラムを用いて三相界面近傍でのイオン移動(拡散)シミュレーションを実行し、界面近傍でイオンの特徴的な動きが発生することを見出した。本研究で得られた反応過程解析における知見はもとより、構築しつつあるメソスケール動的モンテカルロシミュレーションプログラムの有効性は、燃料電池研究はもちろん、さらに多方面における適用が想定でき、ここでの成果は大変大きいものと言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載の昨年度予定である反応経路解析、メソスケール動的モンテカルロプログラム整備、ともにほぼ計画通りに進行している。ただ、空気極解析は、燃料極解析に時間を費やした分多少遅れてはいるが、本年度にて十分対応可能は状態である。
|
今後の研究の推進方策 |
反応経路解析に関しては、経路の全体像がほぼ得られたので、それらを非平衡グリーン関数法でより現実的状況設定で計算できる段階にある。メソスケール動的モンテカルロプログラム整備に関しては、並列化の整備を残すのみである。
|