昨年度、フルオレニル基を有するポリエーテルスルホンケトンの合成とクロロメチル化を経たアンモニオ基導入に成功し、新たなアニオン伝導性電解質を合成した.さらに初期物性としてアニオン導電率等を評価し、分子設計指針に基づく、優れた特性を有することを明らかにした。 本年度は、さらなる特性向上をめざし、ブロック構造を有する新たなアニオン伝導性電解質の合成を行った。また、アニオン導電率測定に加え、耐久性試験や燃料電池特性評価なども行い、アルカリ燃料電池への適用可能性を実証した。 具体的には以下を実施した。 1) 昨年度の知見を基に、より高い特性が期待される親水/疎水マルチブロック構造を有するホリエーテルスルホンを合成した。アンモニオ基導入条件を最適化し、高キャリア濃度(すなわち高いイオン交換容量IEC)を有する新規アニオン伝導性電解質を得た。その際、分子量やIEC、親水/疎水鎖長の異なる一連の電解質もあわせて合成した。 2) 新規材料の特性を明らかにするため、各種測定や安定試験、すなわち水酸化物イオン伝導率および含水率測定、熱物性評価や機械強度測定などを行った。水酸化物イオン伝導率は従来報告されているアニオン電導性電解質膜中で最も高い値(水80℃で144mS/cm)を示し、優れた特性を有することが示された。また走査型透過電子顕微鏡を用いたナノオーダーにおける膜のモルフォロジー観察など、新規アニオン電導性電解質膜の基礎物性を明らかにした。さらに水中または高温下での耐久性加速試験や長期試験などを行い、実用化に向けた特性もあわせて評価した。 3) 高分子電解質構造(ブロック鎖長、分子量、IEC)と各種物性の相関を議論し、さらなる特性向上耐久性向上に向けた指針を得た。さらに、本研究で得られた最良の電解質膜を用いて燃料電池発電特性を評価し、優れた特性(最大出力297mW/cm^2)を有することを明らかにした。
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