研究概要 |
環境型透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy: TEM)内部の酸素雰囲気においてタングステンを加熱し,成長したタングステン酸化物ナノロッドの構造解析,また成長過程観察からタングステン酸化物ナノロッドの成長メカニズムを調査した.TEMによる高分解能TEM像と電子線エネルギー損失分光法(Electron Energy Loss Spectroscopy: EELS)から本研究において得られたタングステン酸化物ナノロッドは,単斜晶系のWO_3であることが判明した.ナノロッドの成長はWO_3(011)面上をタングステン側から(001)方向に結晶が成長することが加熱中のリアルタイム観察から判明した.この結果から,ナノロッドの原料はロッドの根元に存在しているタングステンから供給され,ロッド表面で酸素と結合し,ナノロッドを構成しているのではないかと考えられた.次に,ナノロッドが成長した根元の観察を行った.比較として,加熱する前のタングステンと成長初期で成長を停止させたナノロッドも観察した.タングステン表面には,タングステンの自然酸化膜が存在していたが,成長初期のロッド先端および,ロッド側面には酸化膜が存在していなかった.この結果は,タングステンが隆起し雰囲気である酸素から酸化された結果,タングステン酸化物ナノロッドを形成したわけではないことを物語っている.更に,酸化膜を酸により完全に除去したタングステンを試料として成長を行ったところ,ナノロッドの形成が見られなかった.この結果から,タングステン酸化物ナノロッドの成長には少なくとも酸化膜が必要であることが考えられた.以上の結果から,タングステン酸化物ナノロッドはタングステンが隆起しその後,酸化されたものではないことが判明した.
|