本研究では、金属ナノ粒子が規則的に三次元配置することで、効果的な局在型表面プラズモン共鳴を発現する材料の開発を目指している。初年度であるH22年度には、特に筒状メソ孔が規則配列したメソポーラス酸化物薄膜に金ナノロッドを導入することで、偏光特性を有する材料の作製を行った。金ナノロッドはそのアスペクト比に依存して、表面プラズモンの共鳴波長が変化するため、長さの揃ったナノロッドを規則配向させることで、波長選択性を有する偏光フィルタへの応用が期待できる。また、金ナノロッドの消光度は、現在実用化されている吸収型偏光フィルタと比較して、数桁大きいため、フィルタの厚みを1/100程度薄くすることができ、小型デバイスへの応用に有利であると考えられる。実際に作製した材料は、表面に異方性を有するマイカ基板上で、メソポーラスシリカ薄膜をディップコーティング法により作製し、その筒状メソ孔内に金を析出させることで、規則配列した金ナノ粒子または金ナノロッドを得た。透過型電子顕微鏡で金ナノ粒子または金ナノロッドの形成と規則配列を観察でき、また、偏光板を利用した消光スペクトルの測定により、作製した材料が偏光特性を有することが示された。さらに、金ナノロッドの長さを制御し表面プラズモンの共鳴波長を精密に制御する目的で、作製後の試料にレーザ照射や熱処理を施したところ、金ナノロッドの長さを短くすることができた。これらの成果を合わせることで、偏光特性と波長選択性を同時に有する光学材料の作製へと発展できると考えられる。
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