研究課題/領域番号 |
22760539
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
河村 剛 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助教 (10548192)
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キーワード | 金属ナノ粒子 / メソポーラス酸化物 / 表面プラズモン共鳴 / 形態制御 |
研究概要 |
今年度は、メソポーラス酸化物中での金属ナノ粒子の形状および配列制御に関する研究を行った。金属ナノ粒子の形状を制御する手法は数多く提案されているが、メソ孔内というナノ空間での精密形状制御に関する報告はまだあまりない。そこで、本研究では、筒状メソ細孔を有する酸化物薄膜を鋳型として利用し、さらに光照射による金属一酸化物間での電荷移動を誘起することで、金属ナノ粒子の形状および配列状態の制御を行った。一例として、金ナノロッドを規則配列した筒状細孔内で析出させることで、偏光特性を有する材料を作製した。この材料は、金ナノロッドの表面プラズモンによる光の吸収・散乱により偏光特性が発現するため、消光度が大きく、従来のポリマー系偏光子と比べて、薄膜化に有利である。また、有機成分を含まないため、比較的苛酷な環境においても使用可能な偏光子としての応用が期待できる。他にも、メソポーラスシリカ-チタニア鋳型中で、長さを制御した銀ナノロッドを析出させることにも成功した。これは、銀ナノロッドの析出・成長中に、特定の長さに達した銀ナノロッドの表面プラズモンのみを誘起することで、銀からチタニアへの電子移動を誘起し、銀を酸化(イオン化)させることで、長さを制御するという手法をとっている。この方法で得られる、長さ制御された銀ナノロッドは、その表面プラズモンの共鳴波長を任意に調節できるため、特定の光と強く相互作用する光デバイスへの応用が期待される。また、同じくメソポーラスシリカ-チタニア中で、金ナノワイヤと金ナノ粒子を作り分けることにも成功した。こちらは、金の析出・成長中に紫外光を照射することで、チタニアの電子を励起し、チタニアから金への電子移動を利用することで、金の析出速度を速めて、形状を制御する。こちらも銀の場合と同様、表面プラズモン共鳴波長を制御できるため、新規光デバイスへの展開を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の狙いであった、メソポーラス酸化物鋳型を利用した金属ナノ粒子の形状および配列制御の新規手法を提案・発展させることができた。但し、金属ナノ粒子の超精密形態制御や充填量と形態の同時制御などを最終目標としているため、更なる研究の深化が必要である。また、作製した材料の触媒特性を精密に評価するには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
可視光照射によるメソ孔内の銀ナノロッドの長さ制御に関する新規手法を改善することで、より精密な銀ナノ粒子の形状制御を可能としたい。これについては、照射する光の波長や強度を自在に変えることのできる光源を購入し、新たな実験を開始する予定である。また、作製した試料は、異方性を有する金属ナノ粒子を多量に含む多孔質材料であるため、高い触媒特性が期待される。この点においても、触媒特性評価システムを構築し、材料の詳細な触媒特性を調査する予定である。
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