研究概要 |
NaCl構造を持つ遷移金属酸化物CoOの反強磁性擬正方晶相における外部磁場の印加によるバリアントの再配列による組織制御・巨大磁場誘起歪現象について調査を行った。本年度は調査対象であるCoOの単結晶試料の作製、低温相の結晶構造および双晶組織の解析、バリアント再配列現象の有無ならびにその再配列現象の発生条件の定量的評価を行った。試料はCoO単結晶をFZ法により作製し、さらにArガス雰囲気中において1773Kで48h熱処理を施した。粉末X線回折および背面反射ラウエ写真より、1試料が290Kで常磁性立方晶から反強磁性擬正方晶へ相転移を示し、擬正方晶相が{101}_t (tは擬正方晶1を示す)面を鏡面とする双晶組織であることを確認した。また、この単結晶を用いて90Kから室温の範囲で10Tまでの磁場を印加しながら試料表面の双晶組織の光学顕微鏡観察を行った。さらに、再配列現象の定量的評価のために強磁性形状記憶合金の磁場誘起バリアント再配列現象の解析に用いる磁気的せん断応力τ_<mag>を導入し、磁化曲線および格子定数の温度依存性よりこの値を求め、圧縮試験より求めた双晶変形のせん断応力得,τ_<reg>と比較した。その結果、磁場中光顕観察より約170K以下においてバリアント再配列が生じない一方、170K以上においては再配列が生じていることがわかった。一方、磁化曲線および応力-歪曲線より求めたち、τ_<mag>およびτ_<reg>を比較すると、[100],(cは立方晶を示す)方向に10Tの磁場を印加した場合は約170K以上においてτ_<mag>>τ_<reg>であり、バリアント再配列が生じると予想される。これは磁場中光学顕微鏡観察の結果と一致しており、反強磁性酸化物においても強磁性形状記憶合金のバリアント再配列と同様にτ_<mag>およびτ_<reg>の大小関係からバリアント再配列の有無を定量的に説明できることが確かめられた。
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