研究課題/領域番号 |
22760545
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大塚 哲平 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 助教 (80315118)
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キーワード | 水素脆性 / トリチウム / オートラジオグラフィ / イメージングプレート / 応力 |
研究概要 |
水素の溶解ポテンシャル勾配が母材中の水素を析出物に惹きつけ集積するだけの駆動力となり得るのか、その機構を検証するために、溶融法によりα鉄(Fe)母材中にチタン(Ti)の球状粒子を分散させた模擬i合金を作成し、この合金にトレーサーレベルのトリチウムを含んだガス状水素を注入した後、トリチウムオートラジオグラフィ(空間分解能~1μm)によりTi球状粒子(粒径40μm)およびその周辺の水素分布を測定した。また、溶解ポテンシャル駆動による析出物への水素集積機構に及ぼす応力負荷の影響を調べるために、トリチウムガス雰囲気下で金属に引張り応力を負荷することができる試験装置の開発を行った。 水素を注入した直後、αFe母材中では水素が粒内よりも粒界に高密度に分布していたことから、水素は粒界を通って進入したか、または粒界に強く捕獲されていることが示唆された。Ti球状粒子周辺では水素濃度がやや低下していた。このことは、母材中の水素がTi球状粒子に惹きつけられて、粒子内部に溶解したことを示唆しているようである。しかし、母材と析出物との相対濃度関係は時間および位置(深さ)依存性があると考えられるので、ある時間での水素分布のスナップショットからのみ、水素集積過程を推測するのは危険である。今後は、水素を注入した面に垂直に試料を切断し、この切断面について析出物およびその周辺母材の水素分布の時間変化を調べる必要がある。また、粒径400μmのTi球状粒子を分散させたαFe合金を作成し、空間分解能(50μm)で劣るが定量性に優れたイメージングプレート法を利用することにより定量的な水素濃度分布を測定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引張り試験装置内での放射性トリチウム利用について、その安全性の確認作業が遅れており、トリチウム利用下での引張り試験が未だ実施されていないからである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果である析出物およびその周辺の水素分布は母材と析出物との相対濃度関係によって変化すると考えられるので、ある時間での水素分布のスナップショットからのみ、水素集積過程を推測するのは危険である。今後は、放射性トリチウム利用施設内に整備した切断機を利用し、水素を注入した面に垂直に試料を切断し、その切断面について析出物およびその周辺母材の水素分布の時間変化を調べる。また、空間分解能(50μm)で劣るが定量性に優れたイメージングプレート法を利用することで定量的な水素濃度分布を測定するために、粒径400μmのTi球状粒子を分散させたαFe合金を作成する予定である。
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